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【能登半島地震から学ぶ】事前に検討すべき5つの地震対策

2024年の元日に発生した能登半島地震では、長さ150kmを超える沿岸部の活断層が動いたことで、マグニチュード7.6の大規模な震度が計測されました。特に能登半島先端の奥能登地方では、家屋倒壊や斜面崩壊、津波といった複合的な災害が同時に発生しました。


地震による被害を完全になくすことは困難ですが、適切な対策を講じることで被害を最小限に抑えることは可能です。今回は、能登半島地震から見えてきた課題をもとに、今後の地震に備えておくべきことについて解説しいきます。


この記事で分かること=========
・能登半島地震の被害概要
・能登半島地震発生時の被害建築物の地震対策
・能登半島地震から学ぶ5つの地震対策
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目次[非表示]

  1. 1.能登半島地震の被害概要
    1. 1.1.能登半島地震の基本情報
    2. 1.2.各地で観測された能登半島地震の震度
    3. 1.3.能登半島地震による損壊金額
    4. 1.4.能登半島地震に適用される支援制度と支援金、義援金について
  2. 2.3つの観点から見る、被災建築物の地震対策状況
    1. 2.1.耐震化率(耐震基準)
    2. 2.2.地盤対策
    3. 2.3.地震保険の加入
  3. 3.能登半島地震から学ぶ5つの地震対策
    1. 3.1.耐震性能の向上(耐震化)
    2. 3.2.接合部分の金物検査
    3. 3.3.地盤対策
    4. 3.4.施主への地震保険加入の推奨
    5. 3.5.地震保証の加入
  4. 4.能登半島地震から学ぶ地震対策の重要性


能登半島地震の被害概要

能登半島地震の被害概要


能登半島地震の基本情報

令和6年1月1日16時10分、石川県能登地方を震源とするマグニチュード7.6の大規模な地震が発生しました。震源は北緯37.5度、東経137.3度、深さ16kmに位置し、特に志賀町や輪島市では震度7を記録する激しい揺れが観測されました。内閣府非常災害対策本部の報告によれば、この地震による被害は過去の被害地震と同等以上の規模であったことが確認されています(※1)。


被害の特徴として特筆すべきは、住宅の倒壊被害が広範囲に及んだことです。特に旧耐震基準で建てられた建物に大きな被害が集中し、建築年代による被害の差が顕著に表れました。また、地盤の性質による被害の違いも明確となり、液状化現象による建物被害も多数報告されています。

※1出典元:内閣府非常災害対策本部「令和6年能登半島地震に係る被害状況等について」2024年12月


このように、住宅業界全体の技術力やデザイン力の水準向上、また住宅資材の高騰により、施主がそれぞれ住宅会社違いを明確に知覚できるほど「住宅会社間価値違い」が見られなくなってきた状況これから差別化戦略を考える上で重要だと考えます


各地で観測された能登半島地震の震度

以下は、震度5強以上を観測した主な地域です(※1)。


地域
震度
市区町村
石川県



震度7
志賀町、輪島市
震度6強
七尾市、珠洲市、穴水町、能登

震度6弱

中能登町
震度5強
金沢市、小松市、加賀市、羽咋市、かほく市、能美市、 宝達志水町
新潟県

震度6弱
長岡市
震度5強
新潟中央区、新潟南区、新潟西区、新潟西蒲区、三条市、 柏崎市、見附市、燕市、糸魚川市、妙高市、上越市、佐渡市、 南魚沼市、阿賀町、刈羽村
富山県

震度 5 強

富山市、高岡市、氷見市、小矢部市、南砺市、射水市、舟橋村

福井県

震度 5 弱

あわら市


能登半島地震では、石川県を中心に震度5強から震度7を記録する地域が広範囲にわたりました。特に震度7を観測した志賀町をはじめ、石川県内の複数の市町村で震度6強以上揺れが記録され、住宅倒壊や地盤変状など甚大な被害が報告されています。


この地震の特徴は、広域で強い揺れが観測されたことに加え、石川県を中心とした地域で特に大きな被害が集中していた点にあります。能登半島全域にわたり観測された高震度の揺れは、住宅の耐震性や地盤対策の重要性を再認識させるものとなりました。


能登半島地震による損壊金額

住宅や道路、港湾施設など固定資産の損壊による被害額は、石川、富山新潟の3県で計1.1兆〜2.6兆円にのぼると推計されています。


また、過去の大規模地震の総損壊金額と比較してみると、2011年の東日本大震災では約16兆〜25兆円、2016年の熊本地震では約2.4兆〜4.6兆円と推計されています。つまり、これらの大地震の総損壊金額から見ても、能登半島地震の被害規模は非常に大きかったことが分かります。(※2)。

※2出典元:朝日新聞デジタル「能登半島地震の被害額は1.1兆~2.6兆円 被災3県の政府試算」2024年1月


能登半島地震に適用される支援制度と支援金、義援金について

能登半島地震による被害で生活基盤に影響を受けた世帯に対して、被災者生活再建支援法の適用とあわせて能登半島地震災害義援金の配分がおこなわれました。


まず被災者生活再建支援法では、住宅の被害状況や再建方法に応じて「基礎支援金」と「加算支援金」の2種類の支援金を支給することが定められています(※3)。

被災者生活再建支援法の支援金支給額

​​​​​​※3出典元:内閣府非常災害対策本部「被災者生活再建支援制度の概要


新潟県・富山県・石川県の全域で被災者生活再建支援法が適用され、2024年9月30日時点では9,579世帯に対しておよそ86億円の支援金が支給されています(※4)。

※4出典元:内閣府非常災害対策本部「被災者生活再建支援制度に係る支援金の支給について」2024年9月


また能登半島地震災害義援金についても、石川県令和6年能登半島地震災害義援金配分委員会において決定した基準に基づき、人的・住宅の被害区分に応じて義援金が配分されます(※5)。


被害区分

対象
配分金額
第一次~三次配分
第四次配分

合計

人的
死者・行方不明者

災害弔慰金受給者
180万円
180万円/人
精神または身体に著しい障害を受けた方
災害障害見舞金受給者
90万円
90万円/人
重傷者
地震により負傷し、1か月分以上の治療を要する見込みの方
10万円
10万円/人
住家
全壊
「全壊」と認定された世帯

180万円
180万円/世帯
大規模半壊
「大規模半壊」と認定された世帯
135万円
135万円/世帯
中規模半壊
「中規模半壊」と認定された世帯
90万円
90万円/世帯
半壊

「半壊」と認定された世帯

45万円
45万円/世帯
準半壊
「準半壊」と認定された世帯

35万円

35万円/世帯
一部損壊
「一部損壊」と認定された世帯
10万円
10万円/世帯

全壊と認定された世帯には最大180万円/世帯の義援金が、さらに6市町(七尾市、輪島市、珠洲市、志賀町、穴水町、能登町)に住民登録をされていた住民に対し、一律5万円の特別給付分も配分されます。


今回のような広域に被害が及ぶ地震では、被災者生活再建支援法による支援金や、石川県令和6年能登半島地震災害義援金配分委員会による石川県能登半島地震災害義援金が、被災された世帯の生活基盤の再建に大きく寄与しています。​​​​​​​


​​​​​​​しかし一方で、対象地域全体の被災規模も踏まえると、9,579世帯に対して86億円(≒1世帯あたり約90万円)という支援金額は、建て替え工事や生活資金においてまったく十分でないことが容易に推測できます。



3つの観点から見る、被災建築物の地震対策状況

3つの観点から見る、被災建築物の地震対策状況


能登半島地震では、住宅の老朽化や耐震化の遅れが、被害拡大の大きな要因と指摘されています。特に耐震基準の違いや、地盤の特性、保険加入状況など、住宅の地震対策に関わるさまざまな側面が被害の程度に大きく影響しました。


ここでは、被災建築物の耐震対策状況を「耐震基準」「地盤対策」「保険加入率」の3つの観点から解説します。


耐震化率(耐震基準)

まず耐震化率ですが、特に過疎地では住宅の耐震化が進んでいないようです。実際に被災地である石川県輪島市では、住宅耐震化率が約45%、珠洲市では約51%と、全国平均と比較して大きく遅れている現状が浮き彫りになっています(※6)。

※6出典元:内閣府非常災害対策本部「進まぬ耐震化、被害拡大要因か 能登半島地震 死因9割「家屋倒壊」全国で同様の懸念」2024年2月


特に、昭和55年以前に建てられた旧耐震基準の住宅の割合は、珠洲市で65%と全国の市区町村で最も高いことがわかりました。また、能登町は61%(上から2番目)、輪島市が56%(上から5番目)と、能登半島地域の一部において住宅の耐震化率の低さが際立っていることが伺えます(※5)。


また、建物の接合部に金物を用いた構造が被害の有無を大きく左右したことも指摘されています。接合部に金物が用いられていない建物が倒壊する一方で、適切な金物使用された建物では、震度6強から7の揺れにも耐えた例確認されました。


地震工学の専門家も、「接合部に金物がないと強い揺れに耐えられない」と述べており、柱や梁を金属の部品で接合する耐震基準の重要性を説明しています(※7)。

※7出典元:テレ朝news!「接合部に金属ない建物は揺れに耐えられない」と専門家が指摘 能登半島地震現地調査」2024年1月


これらの結果から、住宅の耐震基準の差が被害の程度に大きな違いをもたらすことが十分に伺えます。2000年の耐震基準改定以降に建設された住宅では、全壊・半壊の割合が1割未満、約7割が無被害であったに対し、新耐震基準(1981年改定)に基づく住宅では全壊率25%、旧耐震基準全壊率50%近く達したという報告もありました(※8)。


耐震基準別の被害程度内訳(能登半島地震)

※8出典元:ちいきのなかに防災ニッポン!「能登半島地震ではどんな建物が壊れたのか?日本建築学会5700棟調査で見えてきたもの」2024年8月


これらのデータから、新耐震基準の遵守と耐震性能の向上を推進することが住宅被害の軽減に直結し、特に過疎地や高齢化が進む地域では、耐震改修の重要性が一層高まっていることを示しているように見受けられます。今後の対策として、住宅耐震化を促進するための補助金制度の充実や、住民への住宅耐震化を積極的に啓蒙することが重要です。


地盤対策

次に地盤対策ですが、建物の耐震基準だけではなく、地盤の特性が被害の拡大に影響を与えたことも明らかになっています。液状化現象による地盤変状が広範囲で発生し、住宅の傾斜や沈下など深刻な被害をもたらしており、内灘町やかほく市では、砂丘と干拓地の境界部に位置する約7kmにわたる地域で液状化が確認されました(※9)。

※9出典元:国立研究開発法人 建築研究所「令和6年能登半島地震における建築物構造被害の原因分析を行う委員会 中間とりまとめ」2024年11月


一方で、地盤改良を行った敷地では、液状化による傾斜被害を免れた事例も報告されています。つまり、基礎構造の工夫は、地盤変状の影響を軽減する上で有効であるということです。また、築年数が比較的新しい建築物では、地盤変状による上部構造の変形が小さい傾向確認されたことから、基礎の設計や施工方法地震被害程度を左右することわかりました。


このように、建物の耐震性向上に着目するだけでなく、地盤対策も含めて総合的に対策することが地震対策において重要だと考えられます。


地震保険の加入

最後に地震保険ですが、先述した通り被災者生活再建支援法による支援金だけでは、住宅の建て替えだけでなく、完全な生活再建も難しいことが課題として考えられます。実際に、被災した都道府県の地震保険加入率を調べると、石川県の加入率は30.2%と、全国で29番目加入率だったことが分かりました(※10)。

※10出典元:産経新聞「住宅被害多発で注目集まる地震保険 加入率に地域差、石川は平均以下の3割」2024年1月


これは、石川県(金沢市)の「今後30年以内に震度6弱以上の強い揺れに襲われる確率」がたったの6.6%という予測データから(東京都新宿区は47.2%))、地域比べて石川県、地震へ備えが遅れていた、あるいは対策意識を高く持ていなかったこと加入率低さ1つ要因として考えられます


実際に地震保険は、住宅再建や修繕、仮住まいの費用を補填する重要な手段です。しかし、地域ごとの加入率や災害リスクへの意識の差で、被災後の生活再建に大きく影響を与えることが、今回の損壊金額と被災者生活再建支援法による支援金の限界により、浮き彫りになったのではないかと考えられます。


能登半島地震から学ぶ5つの地震対策


能登半島地震から学ぶ5つの地震対策

ご紹介した能登半島地震による被害状況や、現在の地震対策への取り組み状況から、私たちは何を学び、今後の大きな地震に備えてどう対策すべきでしょうか。ここでは、大きな地震への備えとして5つの地震対策をご紹介します。


耐震性能の向上(耐震化)

まず1つ目に、耐震性能の向上です。能登半島地震では、旧耐震基準(昭和56年以前)で建てられた建物が大きな被害を受け、多くの家屋が倒壊しました。方で、2000年基準以降の耐震性能を持つ建物では、全壊率が1割未満という結果が示されたことから、新耐震基準を満たすこと建物の安全性向上につながること考察できます。


特に、新耐震基準の中で重視されているのが、耐力壁の配置バランスです。耐力壁は建物に加わる地震の横揺れを受け止める役割を果たしますが、その配置に偏りがあると建物全体がねじれるように揺れ、大きな損傷や倒壊の原因となる可能性があります。そのため、新耐震基準では、耐力壁を建物全体にバランスよく配置し、地震時の構造的安定性を高める設計が求められています。


接合部分の金物検査

2つ目は、接合部分の金物検査です。能登半島地震では、接合部分に金物を使用した建物が倒壊を免れる事例が多く確認されました。柱や梁を金属部品でしっかりと接合することは、建物の耐震性を大幅に向上させる重要な取り組みです。


特に、接合金物が正しく設置されているかを確認することは、建築基準法に基づく耐震基準を満たすためだけでなく、建物の長期的な安全性を保証するためにも欠かせません。例えばプロの第三者機関への依頼を通して適切な金物検査を実施することで、震度6強や7といった大規模な地震でも耐えられる住宅をつくることが重要になります。


地盤対策

3つ目は地盤対策です。能登半島地震では、液状化しやすい地盤も被害要因の1つとして挙げられていました。特に砂丘や干拓地の境界部では地盤が大きく変状し、住宅の傾斜や沈下など深刻な被害が確認されています。このことから、地盤の特性に応じた事前の対策により、問題がある地盤に対して建物安全性を高めることが重要であることを再認識できました。


例えばハザードマップの確認は、地震リスクを把握するための第一歩ですが、それだけでは十分ではありません。状化マップだけでは判断ができない液状化リスクや地盤の安定性を正確に評価するためには、地盤調査の結果に基づいた地盤改良などの技術を活用し、地盤品質あらかじめ確認することで、被災リスク軽減へつなげられるでしょう。


施主への地震保険加入の推奨

4つ目は、施主への地震保険加入の推奨です。能登半島地震は、「地震発生リスクが低い」と考えられていた地域でも、大規模な地震がいつ発生するかわからない現実を突きつけました。このような状況下で、施主に対して地震保険の加入を推奨することは、万が一の生活再建に向けた備えとして極めて重要だと考えられます。


地震保険は、住宅の建て直しや修繕費用を補填するだけでなく、家財の買い替えや仮住まいの費用といった、被災後の生活に必要な出費にも対応します。したがって、地震後の経済的負担を軽減し、早期の生活再建を可能にする重要な手段として、施主へ地震保険加入推奨するようにしましょう。


地震保証の加入

5つ目は、地震保証の加入です。地震保険では補填しきれない住宅建て替え費用に対応するため、地震保証の加入は経済面でも非常に重要です。


地震保証は、住宅購入時の金額を基準に、建物の修繕費用や建て替え費用を住宅価格を上限に100%補償する仕組みで、施主にとって大きな安心材料となります。地震保険の補償金額が法律で上限(建物5000万円、家財1000万円)に設定されている中、地震保証はその不足分を補填し、施主の経済的負担を大幅に軽減します。


また、住宅会社が地震保証に加入することで、万が一の住宅倒壊時に建物の建て替えを建てた住宅会社が担当します。したがって、損壊した住宅の細かな設計や造りを熟知した住宅会社が建て替え工事を担当することは、施主にとっても安心でき長く信頼関係築くことができるようになります。


能登半島地震から学ぶ地震対策の重要性

能登半島地震から学ぶ地震対策の重要性

以上、能登半島地震から学ぶ地震対策の重要性について解説しました。


物の耐震化率や地盤変状による被害状況が、耐震性能の向上や地盤調査重要性を強く認識させたと同時に、地震保険地震保証加入が、万が一倒壊時でも欠かせない備えであることを示しました。これからの地震対策では、住宅の耐震化推進だけでなく、地盤や保険など多角的な視点から災害リスクに備えることが求められると考えられます。


また、自然災害への備えとして、地震だけではなく洪水や季節要因による災害リスクなども忘れてはいけません。地震の発生と積雪が重なった場合、その荷重も影響して建物がより倒壊しやすくなるリスクも高いでしょう。


のように、建物の耐震性能や地盤対策以外にも、自然災害による住宅の倒壊リスクは考えられるため、施主が住む土地特性やその土地で想定される災害リスクをあらかじめ理解しておくことが重要です。この能登半島地震をもって、地震に対して耐震性能の向上以外に何をしておくべきかをぜひ考えていただくきっかけになれば幸いです。


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