
地震保険だけでは足りない?地震被害による資金不足の解消方法5選
地震リスクが全国的に高まる中、施主から「倒壊したらどうなるのか」「補償は足りるのか」といった相談を受けた経験はありませんか?特に地震保険に加入していても、実際には生活再建の費用までは賄えず、建て替えや修繕資金が大きく不足するケースも多く見られます。
この記事では、施主の「地震保険に対する認識」を踏まえて地震被害を想定した資金不足の解消方法としてどう提案すべきかについて考えていきます。
この記事で分かること=========
・施主の地震保険に対する認識
・地震被害による資金不足を軽減する5つの方法
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施主の地震保険に対する認識は?
施主が地震保険に期待する保険金額は、実際に大きなギャップが存在しています。多くの施主は、その地震保険の補償範囲や支給条件について正確に理解していないため、いざという時に「こんなはずではなかった」という事態に陥るリスクが高いのです。
ここでは実際の施主の声を基に、地震保険に対する3つの主要な認識について詳しく見ていきます。
施主の認識①地震保険は住宅の建て替え・修繕に活用できる
多くの施主は、地震保険があれば住宅の再建もできると誤解しています。しかし実際に支払われる保険金は建物評価額の最大50%であり、しかも全損と判定されなければ満額は支給されません。
なぜこのような誤解が生まれるのでしょうか。それは地震保険の本来の目的が「生活の再建資金」であることが十分に説明されていないからです。
地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30〜50%の範囲内で決めることになります。もし火災保険の保険金額が2,000万円の場合、地震保険の保険金額は最大1,000万円です。しかし、現実的な建て替え費用は、間取りや広さに応じて異なりますが、この地震保険の保険金額だけでは到底足りません。国土交通省のデータによると、建て替え工事による住宅建築資金の平均金額は5,745万円といわれています(※1)。
※1出典元:国土交通省「令和5年度・住宅市場動向調査報告書(3.4資金調達に関する事項)」2024年7月
さらに問題なのは、全損判定を受けなければ保険金額の満額が支給されない点です。大半損では最大60%、小半損では最大30%、一部損では最大5%の支給となるため、実際の修繕費用との乖離はさらに大きくなります。このような現実を施主に伝えることで、地震保険以外の備えの必要性を理解してもらえるのではないでしょうか。
施主の認識②地震保険は生活資金にはなるが、十分とは思えない
地震保険は、仮住まいの家賃や生活の立て直しに活用できる一方で、「建て直しには全く足りない」「数十万円程度しか出ない」といった声をよく聞きます。生活資金の一部補填にはなっても、再建にかかる数百万円から数千万円の費用を賄うには不十分というわけです。
地震保険は確かに当面の生活費として機能しますが、その金額は決して潤沢ではありません。実際の地震保険の支給実績を見ると、一部損の場合は建物保険金額の5%程度、つまり1000万円の保険金額に対してわずか50万円程度しか支給されないケースも珍しくないのです。
施主が不満を抱く背景には、こうした地震保険に対する過度な期待も関係しているわけです。地震保険は災害直後の緊急的な生活支援として設計されており、住宅の完全復旧までをカバーする制度ではないことを明確に伝える必要があるでしょう。
施主の認識③地震保険には加入する気がない
地震保険は、その支給額の少なさから、「払った保険料の方が高かった」「雀の涙だった」と感じている施主もいます。否定的な印象を持たれやすい地震保険ですが、本来は生活支援金としての役割を持っており、建物再建とは別に対策が必要であることを住宅会社が丁寧に説明する必要があります。
実際に地震保険の年間保険料は地域によって異なりますが、木造住宅の場合、年間数万円から十数万円程度の負担となります。しかし実際に地震被害を受けた際の支給額は、期待していたほど高くないことが多いのです。
ただし、地震保険は単独で住宅再建を完結させるものではなく、災害時の資金確保の手段の一つとして機能します。つまり、地震保険を「意味がない」と判断するのではなく、「地震保険だけでは不十分」という認識に転換してもらうことが重要でしょう。住宅会社としては、地震保険の限界を正直に伝えつつ、それを補完する他の制度や保証について提案することが求められます。
【地震保険だけじゃない】地震被害による資金不足を軽減する5つの方法
地震保険の限界を理解した上で、施主の資金不足に対する不安を解消するためには、複数の支援制度を組み合わせた提案が不可欠です。住宅会社として地震被害によるリスクを施主へ説明するには、こうした支援制度を理解して提案することが信頼構築の上で重要になります。
ここでは、地震保険以外の主要な資金調達手段について詳しく解説していきます。
解決策①被災者生活再建支援制度(基礎支援金・加算支援金)
被災者生活再建支援制度は、地震などの自然災害で住宅が全壊、または半壊・大規模半壊し、やむを得ず解体した場合に、被災世帯に生活再建のための資金を支援する仕組みです。基礎支援金として最大100万円、また建築・購入・補修・賃貸等の加算支援金として最大200万円が支給されます。
この被災者生活再建支援制度の特徴は、自治体からの支給ではなく、都道府県と国が共同で支給主体となっている点です。そのため、比較的安定した財源に基づいて運営されており、被災者にとって確実性の高い支援制度といえるでしょう。ただし、対象となる災害の規模や被害の程度には一定の基準があり、すべての地震被害が対象になるわけではないことに注意が必要です。
支給額の内訳を具体的に見ると、基礎支援金は住宅の被害程度に応じて支給され、全壊の場合は100万円、大規模半壊の場合は50万円となります。加算支援金は住宅の再建方法に応じて決定され、建設・購入の場合は200万円、補修の場合は100万円、賃貸住宅への入居の場合は50万円が支給されます。これらを合計すると、最大で300万円の支援を受けることが可能です。
解決策②義援金
義援金は、大規模な自然災害などの被災者を支援するために、被災者に一律の金額で直接届けられるお金のことです。最近では能登半島地震でもこの義援金の配分として、認定された世帯に対して一律5万円の配分がされました。地域によって申請の有無や金額が変わる可能性があります。計画的な再建費用としては不安定ですが、補完的資金源として活用できそうです。
義援金の特徴は、その金額が災害の規模や社会的な注目度によって大きく変動することです。大規模災害の場合は全国からの寄付により数十万円から数百万円の配分を受けることもありますが、比較的小規模な災害の場合は数万円程度にとどまることも珍しくないでしょう。
また、義援金の配分には時間がかかる場合が多く、災害発生から実際の支給まで数ヶ月から1年以上を要することもあります。したがって、緊急性の高い生活再建資金としては期待できませんが、長期的な復興資金の一部として位置づけることが適切です。住宅会社として施主に説明する際は、義援金は「あれば助かる追加的な支援」という程度の認識で伝えることが重要でしょう。
解決策③保険会社の地震保険の補償上乗せ
地震危険等上乗せ特約は、地震等による損害が生じた場合に、地震保険金とあわせて最大で火災保険金額の100%まで補償できる特約です。つまり、地震保険金が支払われる場合、地震保険金と同額の金額を受け取ることができるわけです。
ただし、保険の対象が建物で、地震保険金の額とこの特約の保険金の額の合計額が、保険の対象の協定再調達価額を超える場合は、保険の対象の協定再調達価額から地震保険金の額を差し引いた額になります。
地震火災特約については、地震等を原因とする火災の損害が発生した場合に、火災保険金額の80〜100%の補償がされる仕組みです。地震保険をセットにしない場合でもこの特約はセットにできますが、地震による倒壊や津波による流失等の損害は補償されないので、注意しましょう。
解決策④住宅の応急処理(災害救助法)
災害救助法は、災害により住宅が半壊し、自ら修理する資力のない世帯に対して日常生活に必要な最小限度の部分を応急的に修理する仕組みです。市町村が業者に委託して実施し、修理限度額は1世帯当たり57.4万円となっています。
実際に災害救助法の対象となるのは、災害救助法が適用された市町村において、以下の要件を満たす方が該当します。
・災害により住宅が半壊または半焼した方
・応急仮設住宅等に入居していない方
・自ら修理する資力のない方(※大規模半壊以上の世帯は、資力に関係なく対象です)
解決策⑤地震保証
近年サービスとして普及し始めている地震保証では、購入価格を上限に、地震による建物の全壊・大半壊・半壊に対して建て替え・修繕費用が100%補償されます。したがって、住宅が倒壊した後に建て替えもしくは修繕を行う際は、施主は持ち出し負担なく行えます。
この地震保証の最大の特徴は、これまで紹介した公的支援や保険制度とは異なり、建物の再建・修繕費用を100%カバーできる点です。地震保険が建物評価額の最大50%までしか補償しないのに対し、地震保証は購入価格を上限として100%の補償を提供します。これにより、施主は地震による建物被害があっても、追加の費用負担なく住宅を元の状態に戻すことが可能になります。
ただし、地震保証は家を立てた住宅会社が加入する制度であるため、施主が個人で加入することはできません。住宅会社としては、自社の差別化ポイントの一つとして地震保証を位置づけ、施主に対して「建てた後まで責任を持つ」という姿勢を示すことができるでしょう。
また、地震保証の存在により、施主は地震保険を生活資金として活用し、建物の再建については地震保証でカバーするという、役割分担の明確な提案が可能になります。
生活資金は地震保険で、建て替え・修繕費用は地震保証で
地震保険を中心とした既存の制度では、生活資金の一部支援にとどまり、実際に倒壊した住宅を建て直すための資金まではカバーできません。さらに、建物の建て替え・修繕の費用をフルでカバーできる制度は限られます。
これまで見てきたように、地震被害に対する資金面での備えは複数の制度を組み合わせることで初めて一定の確保が期待できます。しかし、地震保険は災害直後の生活支援として重要な役割を果たしますが、住宅の完全復旧までは期待できないのが現実です。被災者生活再建支援制度や義援金なども生活再建の助けにはなりますが、住宅の建て替えに必要な数千万円規模の費用を賄うには不十分でしょう。
その生活再建の資金面をカバーするために、当社では地震保証に関する情報を1つにまとめた資料を無料でご提供しています。施主にとって地震保証があることで、地震保険は純粋に生活資金として活用でき、建物の再建については心配する必要がなくなります。ぜひ、建てた後まで責任を持つ会社として、提案力の強化と信頼構築につながる備えを今から始めましょう。