ジャパンホームシールドのTIPS

新型コロナに負けない戦略的法務


   新型コロナウイルス感染症拡大を受け、消費者のマインドが急速に落ち込んでいる状況を法律相談の現場で痛感しています。商談中の顧客から新築、リフォームは取りやめたい旨の申し出を受けるケースや契約済みの顧客からの解除の要望を受けるなど、住宅会社の経営を脅かすリスクが生じています。

   しかし、法律相談を受けていると、新たな切り口で攻めるチャンスも見えてきています。
​​​​​​​今回は、「新型コロナウイルス感染症に負けない戦略的法務」と題して、住宅会社の皆様方に取り組んでいただくうえで「力点を置きたいポイント」を2つ解説します。


目次[非表示]

  1. 1. 請負契約ではなく、設計契約を締結する
  2. 2. OB顧客との接点を深める


 請負契約ではなく、設計契約を締結する


​​​​​​​   請負契約ではなく、設計契約を締結するマインドが低下している顧客に対して、いつ完成するか分からない建物の請負契約の締結を迫ることは、現実的には非常に難しいと思います。

   他方で、コロナウイルス感染症は、感染拡大が終息され、「終息宣言」さえ出されれば、また、家づくりをしたい、と考える顧客のマインドは向上していくであろうことは間違いがなく、「終息宣言」が出るまでの間、いかに顧客との良い関係を維持するか、という対策も検討していただきたいと思います。

   ここで、住宅会社の皆様に提案したいのが、「設計契約」の締結です。今、多くの住宅会社が建築士事務所登録をし、自らの会社が顧客との間で設計契約を締結することが可能な環境下にあります。

   請負契約を締結する際には、工期の記載をしなければならず、現状の住設機器の部品の納品遅延問題が生じている現状、請負契約書を作成するのにも苦悩している(住宅会社は請負契約を締結した日から工期に追われる立場になる)のに対し、設計契約、このような「工期遅延」リスクすることなく、契約締結することが出来ます​​​​​​​

​​​​​​​   建築士事務所登録をしていない工務店は、仲の良い建築士事務所とタイアップして設計契約を建築士事務所と顧客との間で締結していただき、家づくりのプランを固めていく。そして、コロナウイルス感染症の終息宣言が出され、顧客の家づくりのマインドが盛り上がってきた段階で、請負契約をし、十分に打ち合わせ済みの設計図書に基づき工事を遂行していく、といった対応も良いのではないか?と思います。

 OB顧客との接点を深める


   これまで会ったこともない新規の顧客との信頼関係づくりのためには、やはり対面で話し合い、お互いを理解しなければなりません。ホームページや動画を充実させて自社をアピールできても、対面で話し合い、共感を得て、完成見学会などの機会を創出して当社の家づくりを見ていただき、納得を得なければ、信頼関係は始まらないと思います。

   しかし、OB顧客は違います。既に、良い家づくりをして信頼関係があり、面談を繰り返す必要はなく、電話やメールのやりとりでコミュニケーションがとれる人間関係があるのです。

   私は、コロナウイルス感染症の終息宣言が出るまでは、新規顧客との間では設計契約を締結し、いつでも請負契約を締結し、建築確認を取れば着工できる体制を作っておくこと、収益の柱は、OB顧客に対するリフォームの提案→受注という手法が良いのではないか、と思います。

   私自身、新築主体の住宅会社は、OB顧客に対するリフォーム提案が不十分であるという印象を持っております。

   近い将来、人口減少による着工数の減少リスクを抱えている現状、OB顧客から反復継続的にリフォーム受注を得ていく流れは、いつかは築かなければなりません。リフォーム工事においては、納品遅延問題が生じている住宅設備機器をリフォーム対象としない提案も可能です。

​​​​​​   今回、対面営業による信頼関係醸成が困難な状況であるからこそ、OB顧客との接点づくりという「忙しい時にはなかなか取り組めない」が、将来戦略上、重要な課題に真剣に取り組む事も意識していただきたいと思います。



秋野卓生(あきの たくお)

弁護士法人匠総合法律事務所代表社員弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関与している。
2017年度より、慶應義塾大学法科大学院教員に就任(担当科目:法曹倫理)。管理建築士講習テキストの建築士法・その他関係法令に関する科目等の執筆をするなど、多くの執筆・著書がある。

【役職等】
平成16年〜平成18年  東京簡易裁判所非常勤裁判官
一般社団法人日本建築士事務所協会連合会理事・法律顧問弁護士
一般社団法人住宅生産団体連合会消費者制度部会コンサルタント


ジャパンホームシールド編集部
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