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築10年以降も雨漏り事故に対応するには?瑕疵保険と住宅保証の二重対策

雨漏りは住宅トラブルの中でも、施主からの不満に最もつながりやすいテーマです。特に築10年前後で雨漏り事故が発生することが多く、住宅会社が対応を誤れば施主からの信頼を大きく損なう可能性もあります。また、一度発生した雨漏りは根本的な改善ができないと再発のリスクもあるため、住宅会社にとってこの雨漏り事故への対応はとても重要になります。


 そこで本記事では、雨漏り事故に対して、瑕疵担保責任保険(以降、瑕疵保険)と住宅保証それぞれができることの違いを整理し、11年目以降も安心できる雨漏り事故対応に必要な体制をご紹介します。

 

この記事で分かること=========
・雨漏り事故が発生する原因
・雨漏り事故に対する住宅保証と瑕疵保険それぞれの対応内容
・雨漏り事故に対する住宅保証と瑕疵保険の機能面の違い
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目次[非表示]

  1. 1.なぜ住宅で雨漏り事故が発生するのか?
    1. 1.1.雨漏り事故に関する調査データ
    2. 1.2.雨漏り事故が発生する原因
      1. 1.2.1.経年劣化
      2. 1.2.2.設計・施工時の不具合
  2. 2.住宅保証と瑕疵保険それぞれの対応内容は?
    1. 2.1.瑕疵保険における雨漏り事故対応
    2. 2.2.一般的な住宅保証における雨漏り事故対応
  3. 3.雨漏り事故に対する住宅保証と瑕疵保険の機能面の違いは?
    1. 3.1.①目的の違い -「事故予防」と「万が一の事故対応」
    2. 3.2.②人員面の違い -調査・補修代行の有無
    3. 3.3.③検査方法の違い -コストと効果のバランス
  4. 4.住宅保証の延長で、11年目以降も安心した雨漏り事故対応を

なぜ住宅で雨漏り事故が発生するのか?

なぜ住宅で雨漏り事故が発生するのか

住宅における雨漏り問題は、新築・中古を問わず多くの住宅所有者が直面する深刻な課題です。国土交通省の調査によれば、住宅の不具合で最も多いのが雨漏りであり、住宅業界全体の重要課題となっています。


では、なぜこれほどまでに雨漏り事故が発生するのでしょうか。ここでは、雨漏り事故の実態と主な発生要因を掘り下げます。


雨漏り事故に関する調査データ


保険の支払い対象は「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」


住宅瑕疵保険における事故の95.4%は、「雨水の浸入を防止する部分」に関するものです(※1)。築年数の経過とともに発生率が高まるこの問題は、顧客満足度に直結するため避けては通れません。

※1出典元:日経XTECHー日本住宅保証検査機構「保険金支払いの95%は雨漏り」2024年5月


中古住宅の雨漏り事故件数_JHS調べ


 さらに当社の調査によれば、中古住宅の雨漏り事故件数は築10年以下と比較して、築20年以下の住宅で約8倍に増加しています。この数値が示すのは、築年数の経過と雨漏り発生リスクに明確な相関関係があるということであり、特に注目すべきは、築年数10年と20年の間で事故発生数に大きな開きがあることです。

 

この事故発生件数の傾向から、建材の経年劣化や防水層の寿命が住宅の雨漏り事故リスクと大きな関係があると推測できます。


雨漏り事故が発生する原因

雨漏り事故の予防策や早期発見のためには、主な発生原因を正確に把握することが重要になります。では、具体的にどのような原因が雨漏りを引き起こすのでしょうか。ここでは2つご紹介します。


経年劣化

まず1つ目は「経年劣化」です。防水層の寿命や素材の劣化によって、築7年〜10年あたりで発生しやすくなります。外壁やシーリング材は、紫外線や雨風にさらされ続けることで徐々に劣化し、特に屋根材や外壁の接合部、サッシ周りなどは経年劣化の影響を受けやすい箇所です。


また、温度変化による建材の膨張収縮も、防水層に負担をかけるため微細なひび割れを生じさせる要因となります。こうした自然現象による劣化は、完全に防ぐことは困難ですが、高耐久素材の使用といった使用素材の見直し、また定期的な点検やメンテナンスによる早期発見といった対処で、大きな被害を未然に防ぐことができます。


設計・施工時の不具合

2つ目は「設計・施工時の不具合」です。防水テープの貼り付け不良などが代表的な施工不具合として挙げられます。


これらの不具合は、施工直後の雨漏りとして現れる場合。実際には、シーリングの打ち忘れや、防水処理の甘さなど施工ミスによる漏水も存在しますが、これらは新築時からリスク要因であり、瑕疵保険が最も効力を発揮するケースです。具体的には、防水シートの施工不良、防水層の重ね合わせ不足、水切りの設置位置の誤りなどもありますが、多くは経年変化とともに徐々に顕在化するため、定期的な点検体制の構築が重要となります。


住宅保証と瑕疵保険それぞれの対応内容は?

住宅保証と瑕疵保険それぞれの対応内容は

住宅における雨漏り事故に対して、「瑕疵保険」と「住宅保証」のどちらも雨漏り事故が発生した際に適用できます。しかし、仕組みや対応内容について少し違いがあるため、ここではそれぞれが雨漏り事故に対してどう対応するのかを整理していきます。


瑕疵保険における雨漏り事故対応

瑕疵保険では、「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」における"本来有するべき品質や性能を欠いている"と認められた不具合(=瑕疵)に対して、引渡しから10年間、補修費用等を補償するものです。対象は原則、施工不良や設計ミスとされるケースのみで、経年劣化や自然災害は対象外です(※2)。対象と認められた場合に、住宅事業者が行う補修工事にかかる費用について、保険法人が保険金を支払います。


つまり、雨漏りの原因が明確に「施工ミス」や「設計不良」と判断された場合にのみ適用される仕組みというわけです。この判断基準は、保険制度の安定運営には必要なものである一方、現場での判断が難しいグレーゾーンも少なくありません。

※2参考元:住宅瑕疵担保責任保険協会「住宅瑕疵担保履行法とは


一般的な住宅保証における雨漏り事故対応

一方、住宅保証は、瑕疵保険と同様に「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」を対象に補償提供しますが、瑕疵保険の延長有無でその内容違いがあります。


まず、瑕疵保険を延長しない場合、瑕疵保険は初期10年間のみの適用となりますが、住宅保証は初期20年間の保証が継続します。これにより、法定義務期間が終了した後も、雨漏り事故への対応が可能です。


一方、住宅保証は瑕疵保険の延長有無にかかわらず初期10年間は免責です。10年目までに瑕疵事故があれば、瑕疵保険を使って(使わなくても良し)10年目を迎えるまでに修復したのち、10年目以降保証されます。瑕疵事故が無ければ基本補修は不要です。


厳密にいえば、壁が著しく破損して雨漏りの懸念があれば補修をする場合もあります。よくあるコーキングの欠損など軽微であれば、補修しなくても10-20年も保証されます。


こうした瑕疵保険の延長有無で、瑕疵保険と住宅保証の対応に違いがあることを理解しておきましょう。


雨漏り事故に対する住宅保証と瑕疵保険の機能面の違いは?

雨漏り事故に対する住宅保証と瑕疵保険の機能面の違いは

前項にて瑕疵保険と住宅保証の対応内容について解説しましたが、ともに住宅の品質を担保する重要な内容である一方で、その機能や目的には実は違いがあります。


そこでここでは、雨漏り事故に焦点を当てて、瑕疵保険と住宅保証の違いについてご紹介します。


①目的の違い -「事故予防」と「万が一の事故対応」

瑕疵保険は、制度として“新築時の瑕疵”に備える仕組みであり、防水検査を含む施工段階での品質チェックによって、雨漏り事故発生そのものを抑止する役割を担います。たしかに10年以内の初期段階では事故の発生は抑えられる傾向にありますが、冒頭でご紹介した調査データでも明らかな通り、雨漏り対策を実施しても事故はなくならないのが現実です。


一方で、住宅保証サービスは「予防」と「備え」の両方を目的としています。たとえば定期点検の仕組みを通じて劣化兆候を早期に発見することができ、軽微なうちに対応することで被害の拡大を防げます。また、築10年目以降の雨漏りリスクに備えて、あらかじめ保証範囲や調査体制を整備しておくことで、“事故が起きたときに迷わず対応できる”状態をつくることが可能です。


②人員面の違い -調査・補修代行の有無

瑕疵保険では、事故の調査や修繕は住宅会社側が行います。保険法人はあくまで判定を行う立場として補修に関するアドバイスをすることもありますが、補修の手配を代行したりすることはありません。


つまり、雨漏り発生時の調査や原因特定、修繕方法の決定といった実務的な対応はすべて住宅会社の責任で行う必要があります。これは住宅会社にとって、専門的な調査技術や人員の確保が必要となり人員面で一定の負担が想定されます。


一方で、一般的な住宅保証サービスでは、第三者による調査の実施や、報告書作成の代行が可能です。たとえば当社の「事故調査サポート」サービスでは、雨漏り事故の現地調査から報告書提出までを一括して請け負い、調査費用も1件あたり最大10万円まで補助されます。


この第三者による調査は、単に住宅会社の人的負担を軽減するだけでなく、専門的知見に基づく正確な原因特定と、中立的立場からの報告書作成という二つの大きなメリットをもたらします。施主にとっても、「第三者の専門家による調査」は安心感につながり、調査結果への信頼性を高める効果が期待できるでしょう。


③検査方法の違い -コストと効果のバランス

瑕疵保険と住宅保証では、制度自体に検査方法の違いはありませんが、実務的には住宅会社の選択次第でその方法に違いが現れます。


瑕疵保険では保険申請における調査費用が原則として含まれないため、コスト重視の観点から安価な散水試験が選ばれる傾向にあります。例えば、瑕疵保険対応の現場で一般的な散水試験は、外壁やサッシ周りに水をかけて浸水を確認する方法です。初期費用は抑えられますが、複雑な浸水経路が原因で再発してしまうケースもあります。


さらに、瑕疵保険は修復費用の80%のみをカバーするため、原因特定が不十分で再発した場合、追加修繕費用は住宅会社の負担となってしまうわけです。


 これに対し住宅保証は、原因究明の調査まで可能で、かつ雨漏り事故が発生した時の費用も抑えることができます。たとえば当社の「レインボービュー調査」は、特殊な蛍光液で漏水経路を可視化するもので、散水試験では発見できない複雑な浸水経路も特定できます。

 

散水試験と比較するとこのレインボービューは高度な調査方法であり、一定の費用はかかります。しかし、正確に事故原因を特定できることで、再発防止また補修範囲を小さく抑える効果があるため、最終的にトータルコストを抑えることが可能になります。


住宅保証の延長で、11年目以降も安心した雨漏り事故対応を

住宅保証の延長で11年目以降も安心した雨漏り事故対応を.

雨漏りは、どれだけ施工品質に気を配っても、経年劣化や想定外の外的要因によって、必ず“起こりうるリスク”です。だからこそ、起きてから慌てて対処するのではなく、「どう備えるか」「起きたときにどう動けるか」が住宅会社にとっての信頼構築の鍵になります。


そのためには、法律で義務付けられた瑕疵保険で初期リスクをカバーしながら、住宅保証サービスを活用して経年劣化や11年目以降のリスクにも備える対策が効果的でしょう。


当社では、専門スタッフによる第三者調査や雨漏り事故の根本原因を特定できる【事故調査サポート】付帯した、建物サポートシステムをご用意しています。これにより、住宅会社の人的負担を軽減しながら、高度な調査技術で雨漏りの根本原因を調査することが可能です。ぜひご参考にしてください。


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ジャパンホームシールド編集部
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