防蟻保証も20年間の長期化になる?必要性を解説
シロアリ被害は、住宅の基礎や構造に深刻な影響を及ぼすことがあるため、大切な住宅を守るために適切なシロアリ対策は欠かせません。そして、シロアリ対策として防蟻保証を利用する家庭もありますが、一般的な契約では、5年ごとの契約更新で、都度防蟻対策を行っています。
一方で、最近は「20年間の防蟻保証」を耳にすることも多くなったのではないでしょうか。この20年間という期間の長さに、「そこまで長い期間も防蟻保証が必要なのか?」と思われる方もいるかもしれません。
そこでこの記事では、なぜ20年間の防蟻保証が必要なのか、5年間ではなく20年間の初期契約にどのようなメリットがあるのかについて解説していきます。
この記事で分かること=========
・防蟻保証の概要について
・防蟻保証の適用外ケースについて
・20年間の防蟻保証の必要性・メリットについて
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目次[非表示]
- 1.防蟻保証について
- 1.1.防蟻保証とは
- 1.2.防蟻保証の対象になるシロアリ
- 1.3.シロアリ対策の4つの方法
- 2.防蟻保証に適用されないシロアリ被害例
- 2.1.アメリカカンザイシロアリ
- 2.2.雨漏りや漏水の放置
- 2.3.施工後の増改築
- 2.4.他社業者でのシロアリ対策実施
- 3.20年間の防蟻保証が必要な理由
- 4.さいごに
防蟻保証について
防蟻保証とは
防蟻保証とは、防蟻対策を実施した後にもしシロアリが発生した場合、 利用条件を満たしていれば被害箇所の原状回復工事を提供するサービスのことです。
具体的には、建物の周囲や内部に防蟻薬剤を処理し、シロアリが発生した際に修繕工事を実施するもので、一般的に施主が防蟻業者に依頼して、5年ごとに薬剤処理を行うよう都度契約を更新します。
このように継続的に防蟻保証を更新することで、シロアリ対策を実施しつつ、被害が発生した場合でも修繕の保証が受けられるというわけです。
防蟻保証の対象になるシロアリ
防蟻保証の対象となるシロアリは、主に以下の2種類が該当します。
ヤマトシロアリ
ヤマトシロアリは日本で最も一般的なシロアリで、湿気の多い場所を好みます。湿った木材や地中から建物に侵入して、建物の木材を食べることで被害をもたらします。
イエシロアリ
イエシロアリはヤマトシロアリよりも大規模な被害をもたらす危険性が高いシロアリです。特に、土壌内に本巣を形成し、そこから蟻道を伸ばすことで分巣と呼ばれる小さな巣をたくさん形成します。
しかし、この分巣でなく本巣を除去する処理をしなければ、シロアリの数は減りません。つまり、イエシロアリの駆除の際は、まず本巣を見つけることが重要になります。
以上、この2種類のシロアリによる住宅被害が防蟻保証の対象となります。
シロアリ対策の4つの方法
次に、シロアリを防除する具体的な方法として、つぎの4つについて解説します。
土壌処理
ヤマトシロアリやイエシロアリは通常、地中を通って建物内に侵入します。そこで、建物の基礎の内側や束石の周囲など、シロアリが通る可能性のある土壌を薬剤で処理することで、侵入を防ぎます。
木部処理
建物の木材表面に、噴霧器を用いて薬剤を直接吹き付ける方法、もしくは刷毛等で塗布する方法があります。また、木材や壁に穿孔して薬液を注入することにより、内部からシロアリを駆除する方法もあります。
ベイト工法
シロアリが好んで食べるベイト剤を専用容器に入れ、地面に埋設する方法です。シロアリが生息している箇所に設置し、シロアリがベイト剤を巣に持ち帰ることで、巣全体を駆除することができます。
バリア工法
ニオイの少ない安全性の高い薬剤を住宅の床下へ直接散布して、シロアリが侵入しないようにバリア層を形成する方法です。薬剤自体は床下に散布するため、居住者への影響を極力抑えつつ、効果的な防除が可能になります。
以上が、シロアリ対策で行う4つの方法です。
防蟻保証に適用されないシロアリ被害例
一方で、一般的に防蟻保証が適用されないシロアリ被害の例も存在します。今回は次の4つの例を取り上げてお伝えします。
アメリカカンザイシロアリ
アメリカカンザイシロアリは、日本のシロアリ被害全体のおよそ0.3%と被害件数が少なく、防蟻保証の対象外となることが多いですが、その侵入経路には特異性があります。主な侵入経路は、輸入家具や建材、そして羽アリの飛来です。乾燥した木材を好み、通常のシロアリとは異なり、羽アリが直接木材に入り込んで巣を作ります。
この特異性をもっていることから、床下に蟻道を作らず、空を飛んで住宅の上層部に侵入するため、従来の施工方法でのシロアリ対策が難しくなります。したがって、アメリカカンザイシロアリの国内被害件数自体はかなり少ないものの、穿孔注入処理やホウ酸塩処理といった特別な対応が必要となり、一般的な施工方法では対応できない難しさがあります。
※参考情報元:シロアリ110番「シロアリ駆除に保証期間は存在する?保証の内容は?」2023年6月
雨漏りや漏水の放置
雨漏りや漏水が発生すると、その湿気によりシロアリが集まりやすくなります。したがって、たとえその場でシロアリを駆除しても、時間が経過すれば再びシロアリが出てくる可能性が高くなります。
一般的な防蟻保証では、こうした水分が原因の環境に起因する問題には適用されないため、雨漏りや漏水の箇所はあらかじめ修理する必要があります。
施工後の増改築
防蟻保証の契約時に適用されるのは、基本的に「住宅を施工したときの建物の状態」です。したがって、契約後に建物の増改築が行われると、新しくつくられた建物部分が防蟻保証の範囲外となることがあります。
このような場合、保証の更新や再契約について業者へあらかじめ相談する必要があるので、増改築の際は注意が必要です。
他社業者でのシロアリ対策実施
施工を担当していない他社業者によってシロアリ対策が行われた場合は、保証している状態が変更されるため、元の保証が適用されなくなる場合があります。したがって、新たにシロアリ対策を依頼する際は、一度施工を担当した同じ防蟻業者に依頼する方が望ましいです。
このようにシロアリ対策は、住宅の価値を長期間にわたって維持するために重要ですが、防蟻保証の契約には一定の制約があり、適用されないシロアリ被害のケースもあるため、契約の際にはこの4つの項目に注意してください。
20年間の防蟻保証が必要な理由
シロアリは住宅にとって脅威的な存在ですが、特に木造住宅では、シロアリの被害が進行すると、安全性が著しく損なわれるリスクがあります。シロアリ被害のリスクを抑えるために、長期的に防蟻保証の適用を受けることが重要ですが、なぜ5年ごとの防蟻保証の契約更新ではなく、20年間の初期保証が必要なのか。その理由について解説していきます。
シロアリは築年数に比例して被害リスクが大きくなるから
まず1つ目の理由が、建物の築年数が進むに連れて、シロアリによる被害リスクは高まるからです。築年数とシロアリ被害リスクの因果関係は証明されていないため断言できませんが、考えられる原因として、築年数が増えるごとに木材の劣化や湿気の溜まりやすさも増えやすくなることが考えられそうです。
実際のデータとして、国土交通省が公表しているシロアリ被害実態調査報告書の「築年数別義蟻害骸発生率」によると、築10年未満の建物のシロアリ被害発生率は約5%に過ぎませんが、築15年以上になると10%を超え、さらに築20年から30年では約20%になっています。このように、築30年までにおけるシロアリ被害のリスクは、築年数に比例して指数関数的に増加していることが分かります。
※参考情報元:国土交通省 「シロアリ被害実態調査報告書 」2013年3月
赤:防蟻処理保証切れで、再施工せず、一定期間経過(放置)した物件
緑:防蟻処理保証期間内の物件(新築予防保証、既存予防保証、駆除保証など)
このリスク傾向を考えると、初めから20年間の防蟻保証に加入することで、都度防蟻対策を行う出費や手間がかからないため、ランニングコストを抑えられるというわけです。
ただし、防蟻対策を行っている住宅は、行っていない住宅より5年目以降の事故発生率は低く抑えられているものの、10年目以降の事故発生率は4~6%と、一定発生することが確認されています。つまり、防蟻対策を行っていてもシロアリ被害リスクを0%にすることは難しいというわけです。
したがって、すでに住宅を建てている段階であれば、今後のシロアリ被害リスクを軽減するためにシロアリ対策の実施を今すぐ検討することを推奨します。一方で、これから新築住宅を建てる場合は、住宅を建てる前からシロアリ対策を検討しないと、建てた後では対策できない防蟻処理や、後々の突発的な出費の発生が懸念されるので、住宅を建てる際は防蟻保証についてよく検討しましょう。
責任所在の判断が難しい事故にも対応できるから
20年間保証が必要であるもう1つの理由として、トラブルや事故の責任所在が不明確な場合にも対応できる点が挙げられます。
一般的な建物保証では、シロアリによる損傷が免責事項として扱われることが少なくないため、損害に対する適用範囲が限定されるケースがあります。つまり、責任所在が不明確な状態では、損害賠償を十分に受けられない事態が生じることがあるというわけです。
過去の事例として、1,000万円相当の事故が発生したときは、事故の原因箇所が20年間の建物保証と防蟻保証の適用範囲が重複していたことで、どちらに責任所在があるのか判断が難しい状況になりました。
結果的に、事故損害の80%が防蟻保証の対象範囲、20%が20年間の建物保証の対象と判断されましたが、当時は長期保証しか加入していなかったために、20%の建物保証の適用分しか損害金額を補てんすることができませんでした。
以上のように、長期間の防蟻保証は、防蟻対策による被害リスクを減少させるだけでなく、事故発生時の責任所在の判断が難しい場合でも、しっかりと損害金額を補てんができるので、非常に重要です。住宅を安心して長く使用するためにも、20年間の防蟻保証の検討は非常に有益であると言えるでしょう。
さいごに
以上、20年間の防蟻保証がなぜ必要なのかについての解説でした。防蟻対策によるシロアリ被害リスクを抑えるだけでなく、建物保証が適用していない損害箇所も補填できるケースも十分にあるため、20年間の防蟻保証は、住宅を長期にわたって守り続けるために必要だと弊当社は考えています。安全な住まいを長く続けるためにも、ぜひ20年間の防蟻保証を考えてみてはいかがでしょうか。
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